周術期疼痛管理研究会 活動リニューアルのお知らせ

周術期疼痛管理研究会は、発足以来20年近くにわたり、術後疼痛に苦しむ患者さんへの看護の向上を目指して活動してまいりました。

研究会発足当初は、「術後なのだから痛いのは当たり前」「日が経てばよくなる」「術後は我慢して当然」と考えられることも少なくありませんでした。十分な疼痛緩和が得られない患者さんを前に、看護師もまた、何ができるのか分からないという無力感を抱えていました。

そのような時代に、患者自己調節鎮痛法(PCA)という新たな疼痛管理法が導入されました。当時は画期的な鎮痛法であり、これをきっかけに、これまで術後疼痛に苦しむ患者さんへの対応にジレンマを抱えていた看護師だけでなく、医師、薬剤師、栄養士をはじめとする多くの医療職から、患者さんやご家族の抱える苦痛や苦悩を何とか解決し、患者さんの望む安楽を提供したいという声が上がるようになりました。

本研究会では、痛みを身体的側面だけでなく、心理的・社会的・スピリチュアルな側面を含むトータルペインとして捉えること、そして、多職種がそれぞれの専門性を生かして協働することを活動の柱としてきました。教育セミナーや研究会フォーラムを継続して開催する中で、臨床看護師をはじめとする多職種の皆様と、現場の経験や課題を語り合い、多くの思いを共有してきました。こうした活動を長年にわたり続けることができましたのは、本研究会の趣旨に賛同し、ともに学び、実践を支えてくださった皆様のお力によるものです。

改めまして心より御礼申し上げます。

現在、PCAは多くの医療施設で活用され、痛みを身体面だけでなく多面的に捉える考え方や、多職種が連携して術後疼痛管理に取り組む体制も、臨床に広がってきました。さらに、ERASなどの低侵襲手術や回復促進を目指す周術期管理の普及により、患者さんの回復過程や入院期間は大きく変化しています。

周術期医療は、限られた時間と資源の中で、患者さんにとって真に必要な治療やケアを選択する時代へ移行しています。その一方で、臨床現場の多忙化や関連学術組織の専門分化などにより、従来の形式では活動を十分に展開できない状況が数年にわたり続きました。このような背景から、本研究会では、2025年度は教育セミナーと研究会フォーラムを休止し、顧問・メンバーの皆さまとともに、研究会の役割と今後の活動のあり方について協議を重ねてまいりました。

その結果、本研究会がこれまで取り組んできたテーマと、活動を通して築いてきたつながりを大切に継承しながら、従来の組織体制と活動形式には、いったん区切りをつけることといたしました。

今後は、術後疼痛管理を活動の原点としつつ、その対象を周術期看護全体へと広げ、周術期看護、とりわけ患者さんの回復支援に関心を持つ臨床看護師、教育者、研究者、その他の医療職とのネットワーク形成と交流を重視した活動を推進してまいります。学術集会等における活動や知見の共有を通して、地域や施設、職種、立場を越えて共通する課題を持ち寄り、ともに考える機会をつくってまいります。

本研究会が大切にしてきたのは、単に疼痛管理の方法を普及することではありません。患者さんやご家族の苦痛を多面的に理解し、多職種がそれぞれの専門性を持ち寄りながら、目の前の患者さんにとってよりよい医療と看護を、ともに考え続けることでした。この活動の本質は、医療が変化しても変わるものではありません。

AIやデジタル技術が急速に進展する現在だからこそ、患者さんを身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな側面を持つ、かけがえのない一人の人間として捉える看護実践の価値は、これまで以上に高まっています。

これまでの歩みを礎として、変革する時代に求められる周術期看護の新たな課題に向き合い、新しい実践を生み出す活動へとリニューアルしてまいります。

今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

周術期疼痛管理研究会 代表 井川 由貴